原子力ムラに集まる人たち

 

「原子力ムラ」という言葉を作ったのは、環境エネルギー政策研究所を主宰している飯田哲也氏であり、現状の原子力発電を取り巻く環境というものが、全体が利益を共に享受する共同体であり、なおかつその内部に意思決定の中心が存在しない「村社会」と非常によく似ているということから命名したということです。

 

現在の日本におけるエネルギー政策の中心とされてきた原子力発電は、その開発や運用というものに莫大な資金が必要になります。これらの莫大な資金というものが、電力会社、原子力プラントメーカー、監督官庁、大学や研究機関とその研究者、政治家、マスコミなどの内、原子力発電に関連する特定の部門に集中して還元されていくために、そこに利益共同体というものが形成されることになるのです。

 

この「原子力ムラ」を形成するひとつの原因として、原子力工学を学んだ学生の進路に幅がないということが指摘されています。こういった学生はその専門性のために、その就職先は限定されることとなり、就職後の対外的な交流というものもかなり限定されることになるのです。

 

こうした理由から公的機関の中立性というものが危ぶまれているのです。また、諸外国などでは既に進行しつつある原子力発電からの脱却というものに焦りを感じ、それが逆に現状の「原子力ムラ」の結束を高めることにも繋がっているようです。